久々にブツ系エキシビ。気づいたのが遅かったので、見逃すところだった。
小粒といえば小粒でしたが。
円仁展なわけで、仏像展とはまた違う。円仁の生涯を辿る、わりあい書き物資料が多い地味系。
書き物はあんまり興味ないなあ。だって古文書読めないし。もうちっと美術系展示物が欲しかった。
ブツの良作は展示の最初に位置していた唐時代の仏像頭部。8世紀と書いてあったような。
2体あって、片方は鼻から下唇にかけて削りとられてしまっているんだけどね。
大陸の端正さが感じられる造型で、ちょっと嬉しい。大陸もんはなかなか見られないし。
先入観があるせいなのか、大陸の仏像は、ほんのりと遠いギリシアの香が漂う気がする。
ギリシア→ガンダーラ→中国と渡って来る、シルクロードを吹く風。
シルクロードの終点には一応奈良があるんだけど、日本の仏像と大陸の仏像を並べてみた場合、
やはり日本人であるせいか、その一致点より相違点の方に目が行く。
ので、背後にはるか遠い国を感じて感慨を覚えるということがない。
そういう意味では、いいですよ、たまに。舶来物を見せてもらえるのも。
あとは延暦寺の聖観音菩薩立像。これは有名ですね。
手に持った蓮の蕾と茎、そのゆるやかな捻れと仏像本体の捻れが相似形。
下半身、特に足がわずかに細すぎてバランスが悪いかなと思うところを除けば過不足のない出来。
過不足がなさすぎるゆえに、あまりじっと見ようと言う気にならんところがある。
困るのは黒石寺の伝慈覚大師坐像。
なんだか正体がさっぱり想像出来ない。
いつのものなのか、来歴は、とか、書いてあったのかもしれないけど見なかったから、
全然知識がない状態で考えてみたのだが、わからんなあ。
まず、時代は初期というわけではないよね。平安時代も半ば以降。
全体の造型はかなり端正だから……根っからの地元仏師が彫った気はしない。
衣紋もなかなか洗練。洗練とまではいかないか。でも型に従ったバランスの良さがあるよね。
が、顔がねえ。けっこう造型的には癖がある。なんかどこか……異人風ではないですか。
特に鼻が気になる。目と眉がかなり基本にそった造型のわりに鼻が個性的。ずいぶんと庶民的な鼻。
……ということは、どういうストーリーがありうるんだ?
「何者?」と問いかけても返事はなく。
気になる。何かとても劇的な物語がその成立に付随している気がする。
しかし長い年月が経って、今となってはその事情は既に忘れ去られ、本来は違うものとしては
作られたのに、伝慈覚大師像として伝わってしまう……
……という気がした。
事実はタイムマシンでもなければ確かめようもないけれども。
なんかこの仏像は特殊な気がする。異様さを感じる。アヤシゲ仏像系もけっこう好きだ。
ちなみにアヤシゲ仏像でお気に入りなのは、飛鳥大仏、夢殿の救世観音、法隆寺の百済観音。
後二者をアヤシゲと感じるのは間違いなく、梅原猛の「隠された十字架」の影響を受けてはいるが……
久々のブツ系は良かったけれど、もう少し詰まったエキシビが見たいなー。
最近あんまり来ない。見ごたえがあるものが。
各ミュージアムの今後の予定をチェックしてみても、今年度はもうほとんど……
一応「日展100年」は行こうかなあ。しかし傾向の違うものをまとめてみるというのも、
節操がない気がするが……
コメント