見に行こうかどうしようか迷ったが、どこぞで読んだ「脚本がいい」という評に釣られて
行ってみた。昨今、脚本がいいと言える映画って少ないですからね。
……見終わって、「あ、“脚本がいい”ってこういう意味ね」と思い、少々肩すかし。
実はわたしは、台詞回しの良さとかそういう類を求めていたのに対して、この作品は
作りの巧妙さという意味での「脚本がいい」であったので。
それが悪いっていうんじゃないんだけど、多少複雑でありました。
作りの巧妙さはなかなか評価出来る部分で、「ほほー、考えはったな」とにやり。
あっ!とまでは言わせてくれなかったのが惜しいけど。まあ、香川照之の最後の最後は、
軽く「あ。」だったかな。実は実は実は、の部分をけっこううまく繋げていたし、
昨今には珍しく、たしかにちゃんと考えて作ったと言う気がしたよ。この部分の印象は良い。
映画で一場物は勿体ない気もするけれど、上手く作ってあれば咎める筋合いはない。
今回、多少舞台感が漂うシーンもあったけど、上手く作ったと言えるのではないか。
ささいな行動がほとんど伏線になっている。よく考えた。
キャスティングもちゃんとしていたし。密度の濃い映画であると言ったら過ぎる褒め言葉だけど、
少なくとも雰囲気だけのお涙映画よりはずーっと「作品」でしたな。
ただ、笑いの部分は残念。
まんまテレビの軽さを感じてしまった。いやー、これは好き好きなので、下手だと断定は出来ないけどね。
笑いは、テレビのお笑い番組で通常流されているレベルで、まあ、ね、笑えないわけではないが……
もう少し大人っぽい線を期待したかった。その点がクリア出来てれば、すごい!と言ったと思う。
それから、導入部の演技がちょっと。
多分リアルでああいうシチュエーションになったら、まさにああいう風にふるまうんだろうけど、
あまりにもティピカルすぎて。わざとらしさもたしかに監督のねらいなんだろうが、
あそこをもう少し大人っぽく作って欲しかったなあ。シブめに。
役者は、やはりあの位置に香川照之を置いたのが大正解だなー。
しかし彼はつくづく役者だ。何でも出来る。しかし昨今、癖者でしか芝居を見てない気がするので、
たまにはものすごく透明感のあるいい人!というのを見たいかも。需要は少ないかもしれないけどね。
ユースケ・サンタマリアは、あまりシリアスな部分を見たことがないので、わたしとしては
多少意外な役。でも歯切れ良い台詞が生きてた。この二人が引き締めた。
他の3人は……個々を見ると多少の物足りなさを感じるけど、5人全員が同割合で濃く演じて
成り立つ話ってのもありえないし、うまく調和してたんじゃないでしょうか。
小栗旬、小出恵介、ほんの少し、あとひと刷毛ほど癖者であっても良かったかなあ。
いや、そこまで望むのは贅沢だろうか。ドランクドラゴン塚地は、いい役者かも、と期待が
高かった分普通。悪くはなかったが。前半一手に安めのお笑い部分を担当するので、少し損かな。
うーん。頭で評価する分にはなかなか。実際見るとそこそこ。という作品だった。
なかなかとそこそこの差は、やはりお笑いの部分かな。こういう捻りのない笑いを見たい時も
あるかもしれないけど、せっかく筋を考えて作っているのだから、もう少し捻った笑いが
欲しかったなー、と……
期待しすぎないで見て吉。
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