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< アヒルと鴨のコインロッカー >

全編オール地元ロケ、という部分に惹かれて見に行った。
そしたら主人公の大学生が通う大学は我が母校なのであった。久々にキャンパスを見て、
懐かしかったねー。ははは。ついでに彼の設定なら、わたしの後輩だ。
もしかしてあの使用教科書、変わっていないのではないか。
主人公のアパートも実はキャンパスのそばなので、あの辺にまつわる思い出も、まあ、そこそこある。

ネタバレ含む……(見ていない人は読まない方が良い)

注・この作品で原作と映像、どちらが先が良いかと言ったら、映像が先の方が良いかもしれない。

最初のまどろっこしさは正直苦手だった。
主人公を演じる濱田岳。役どころだってのは重々承知だが、もう少し流暢に喋ってくれっ!
河崎を演じる   を演じる瑛太。演出だってのは重々承知だが、その人工的な間のとり方をやめてくれっ!
話が進むにつれてテンポは多少良くなりましたけどね。

わたしは伊坂作品がそれほど好きじゃないので、話自体の後味の微妙さはどうも……
話の基幹部ははっきりいって暗い。その暗い基幹部にしては、全体的には微妙にさわやかなのだが、
その混在ぶりが苦手。何より、伊坂作品に顕著なのは「仕掛け」。
今回もありますよ、大きな仕掛けが。やっぱり来たか、と苦笑い。

まあ今回の仕掛けは、作品効果的に必然性がないこともないけれどもね。
あの仕掛けがなくとも話は組み立てられるんだけど、切なさは段違い。
外国人留学生という存在へのピンポイントな(しかし軽い)問題提起という点でも評価出来る。
……でも間違いなくリアルじゃないから、「いや、無理やろ」って言いたくなるんだよ。
仕掛けを作ったゆえに、話が無理になるのは基本的には嫌い。
ああいう環境下でドルジが字が読めないなんてあるわけないもの。

話の部分ではどちらかというと印象が悪いのだが、その他の部分は概ね良かった。
役者と。雰囲気。ロケーション。うーん、やはりロケーションを楽しめたというのは大きかったな。
この部分がごっそり抜け落ちていたら、この映画の印象は薄かったに違いない。
地域的な違和感はほとんどなかった。あの場所にあるアパートに帰るのに、バスには乗らないだろう、
とかいうのは当然あるけれども。そういうのは言ってもしょうがないことだし。
あ、でも唯一、書店のアルバイトの女の子の方言は激しく違和感があったな。
あの年代であれだけなまっている子は多分存在してない。だいたいあれは何弁?
聞いたことのない言葉のような気がする。

濱田岳、「絶対この人、何かでしっかり見ていた」と思っていたのに、パンフレットを見るまで
わからなかった。「平成夫婦茶碗」の長男役の子ですか!
ああ!言われてみれば全然変わってないわ!当時、いい感じの子役だな、と思っていたけれど、
役者を続けていたんだね。ちょっと嬉しい。
瑛太と言う人は初見で、最初は下手でこの間のとり方か、と思ったけど、
ドンデンの前後の雰囲気の変化が上手くて驚いた。最初の醒め具合と、後の純朴。
同一人物には思えなかった。彼はこれから来ますわねー。浅野忠信路線かね。

さて、それで、タイトルが「アヒルと鴨のコインロッカー」なわけだが。
……コインロッカーはたしかに最後、まとめとして出て来るし、象徴としては多少あるけれども
タイトルに持って来るほどの重みはないでしょう、とわたしは言いたい。
尤も、小説と映画とでは「コインロッカー」の重みは違うかもしれないけど。

コインロッカーは「神さまを閉じ込める」という行為。ちょっとこれが疑問なのだ。
これは、映画の中で語られる「悪事を働いたら生まれ変わる時に、神様に下等な生き物にされてしまう」から、
悪事を働く間は神様に目をつぶっていてもらおうということなわけでしょ。
悪事=復讐ですか?だったら、復讐行為は既に完了しているのだから、
あの時点でコインロッカーに入れても仕方ないよね。
あの時点で「閉じ込める」なら、この後に続く自首か、逃亡に対するものになるのではないか。
しかし自首を悪事とも言い難いし、逃亡を示唆するというのもおかしな具合になると思うんだよ。
逃亡してその先に何があるわけじゃないし。これが「捕まる前に一度ブータンの景物を見てから」
とか言う話なら、今だけ神様にお目こぼし願う、の象徴行為としてコインロッカーはありだけれども。
この辺、納得出来ずに座り心地が悪い。作りすぎじゃない?と言いたい。

あと、鴨とアヒルの定義も無理がないか……
普通、鴨とアヒルを「外来種か否か」で分けはしないと思うんだよ。
二者の違いは何より野生種か否かでしょう。アヒルのイメージとして外来種というのは
人によってはあるかもしれないけど、それが第一に来るほど強くはないと思う。
似て非なる外来種・在来種と言えば、もっとぴったりなのがあるはず。
……しかし考えてみてもあまり浮かびませんがね。
うーん、きゅうりとズッキーニ。あまり似てないか。さくらんぼとアメリカンチェリー。微妙だな。
西洋タンポポと日本タンポポ。これじゃあタイトルにはならんな。

まあ、でも全体としては好き。佳作といっていいと思う。
微妙な話が平気な人にはお薦め。

余韻は、残る。

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これから夏にかけて見たい映画がけっこうあって嬉しい!
この1年ちょっと、なぜこれほど食指が動かない?と我ながら不思議なくらい
見たい映画がなかったからなー。
ま、それでも期待感で言えば、全体的に小粒ではあるんだけどね。いいのだ。「見たい」が大事。
楽しみ。

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