映画鑑賞を名画座から始めたわたしにとって、オードリー・ヘップバーンは非常に目に親しい女優。
多分作品として一番見ているのが彼女の出演作だと思う。「緑の館」まで見てるんだから。
(ちなみに「緑の館」は何と言うか、ファンタジーにもほどがある!という作品。)
一般的な人気で言えば「ローマの休日」か「マイ・フェア・レディ」かだろうけど、
わたしはもしかして、「おしゃれ泥棒」が一番好きかもしれない。
贋作者の娘が父の贋作を美術館から盗み取ろうという話。
そんな犯罪者とその娘であるにも関わらず、ヘップバーンもそのお父さんも、一点曇りもなく明るい!
この無茶苦茶能天気な設定!いいですねー、嬉しくなってきますよ。
美術関係であることもプラス。ヘップバーンが住んでいる場所もけっこうな館だし、
美術館が舞台だし。内装・建物、含めて見てて楽しい。
相手役のピーター・オトゥールもかっこいいー。はっきり言って実にツボ。
何がツボって、優男のくせにけっこう強か、ツッコミが厳しいところだなー。
わたしは掛け合い漫才系カップルに弱いので、オトゥールの台詞は実に嬉しい。
脚本家エライ!と言いたいぞ。
オトゥール自身は、他作品を見たことがなく。「アラビアのロレンス」一度録画したことは
あるんだけど、最初見て退屈してしまったので最後まで見なかった。
あ、近年の「トロイ」があるか。しかし既に忘却の彼方だな。プリアモス王。悪くはなかった、と思うのだが。
こういう、オシャレで能天気な作品を現在の邦画で作れないものだろうか。
そんなに難しくはないと思うんだけどねー。昨今は能天気な作品ってギャグ系かトンガリ系に
なっちゃうようだね。小粋でほのぼのな能天気を狙ってみて欲しい。
しかし、能天気な中にも忘れてはいけないのは「才知」であって、それがないものは
単にそれだけのものになってしまう。それじゃーしょうがない。
ただ、才知ある作品は才知ある脚本家にしか書けないものなので、何とも。
小才の利いた人間は多くても、才知となるとお寒いばかり、というのが現況か。
「7月24日のクリスマス」あたりはもっと練りこめば、わたしが期待するようなものに
なる可能性はあったかも。しかしあの話にはほとんど才がなかったからなー。
唯一、「長崎をリスボンに見立てる」というのは才の部類。しかしそれが上手い!というほど
生かせていたとは到底いえない。ううむ。残念。
ところでイーライ・ウォラックが変なアメリカ人婚約者を演じている!
彼はついこないだ見た「ホリディ」で、ハリウッドの老脚本家を演じた人。
嬉しかったなあ。どっちかというと、「ホリディ」の方が可愛げがあって良かったですよ。
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わたしの好きな作家にシャーロット・マクラウドというアメリカの作家がいて
「セーラ・ケリングシリーズ」というコージー・ミステリを書いている。
そのあとがきの一編に、このシリーズと「おしゃれ泥棒」を
引き比べてみたものがあって、実に納得した。うん、確かに設定が少々似てますわ。
雰囲気もだし、シリーズ中の「盗まれた御殿」なんて、話自体もけっこう被る。
そういえば、マクラウドの作品もここのところ翻訳が出てないなあ。彼女の小説は
文章が少々捻り気味なので、原文には歯が立たない。出来るだけ早く翻訳して欲しいものだ。
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