……このやたらと長い小説の最終ページまで、早く辿り着かんものかと願うばかりの時間……
やっぱりクーンツもあかんわ。ここのところ、長い小説を読んでは「長い!長すぎる!」と
叫んでばかりいるんだけど、どうしたもんだろう。ったく、半分でいいだろうよ、この話!
ま、数多くのキャラクターを描き分けてるのはエライ。類型的といえばその通りだが。
しかしあれだけもったいぶって、原因がアレかー。1991年の刊行当時だって、
あのパターンは相当使い古されていたはずだと思うが……
いや、SFでアレをワンパターンだからって禁じ手にしちゃかわいそうだが、
書くならもう少しオリジナリティのあるアレにして欲しい。
しかし、訳者があとがきでこんなことを言っちゃいけないんじゃないかね?
>SFファンから見れば、クーンツの作品は、いずれも高名なSFの古典への
オマージュと読めないこともないのだが、
これを意地悪く読むと、クーンツの作品は手垢がついた話の焼き直し、ということになる。
わたしはSFをそんなには読んでいないけれども、それでも「ありがち」と感じるのだから、
SFを読んで来た人はもっと強烈にそう感じるだろうなあ。
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いや、この本を読んで言いたいことは別にある。
文春文庫でいえば下巻の416ページあたりから始まる
「異星人とのファースト・コンタクト」(あ、言っちまった)から展開する話。
>進んだ文明と、遅れた文明が接触したとき、遅れた文明のほうは、自分たちの伝統や制度に
自信を失って、ときには根底から文明が崩れてしまうことがあるという。
その実例として、「エスキモーが西洋文明と接触したとき」を挙げている。
>しかし、エスキモーの文明と比べると、われわれの文明の方が洗練されていて、
いろいろ綾に富んでいたことは確かだ。
……なんでこう断言しちゃうかね?つーか、「洗練」も「綾に富んでいる」も
あくまで西欧的な尺度に立って見れば、という条件がつくことに気がついているのか。
文化によって可視領域は違う。西洋の頭ではまず普通は理解出来ない、見えないものが
エスキモーの文化の中にあるとちゃんとわかって言っているのかね?
それをわかっていて、「確かだ」なんて、キャラクターに言わせるのか。
その2ページ後に、今度はアメリカ・インディアンについてこう書いている。
>インディアンを滅ぼしたのは白人の銃じゃない。文明の衝突が命取りになったんだ。
新しい思想がどんどん流れ込んできて、インディアンは、比較的遅れていた自分たちの
社会を新しい目で見ることを強いられた。それが自信の喪失につながり、文明の停滞や
崩壊につながった。
よう言うわ、と思う。勝手に他人の土地にずかずか入って来て、力と技術によって相手を
狩りたてながら、それで「白人の銃じゃない」と?
文章の後半については、検討の余地はある。そういう側面もなきにしもあらずだったと思う。
が、「白人の銃じゃない」と言い切るとはね。
厚顔無恥である。文化の衝突は存在したにせよ、まずあったのは侵略者の獰猛でしょ。
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アメリカと、その背後にある西欧文明についてはうっすらと考えることもある。
……が、どうもちゃんと向き合うには面倒なテーマなので、あくまでうっすらと。
そのせいで、なかなか答えに辿り着けないでいるのだが。
わたしは正直に言って、アメリカが嫌いだ。
ひと月ほど前に、池澤夏樹の「世界文学をよみほどく」という本を読んだのだが、
その中にアメリカについての言及があった。(これについてひとくさり書きかけたが、
あまりに長くて収拾がつかなくなったので消去した。)
池澤夏樹は、「アメリカは歴史が短い。つまりいざという時の規範とするべき先例が少ない。
なので、一旦事が起こると極端に走る傾向がある」……わたしが読み間違えてなければ、
こんな風に言っている。(手元に本がないので、精度は保証出来ない)
わたしのアメリカ嫌いは、歴史が短いこととかなり密接に関係する気がしていたので、
それを結びつけてくれる池澤の一文は、ちょっと納得したいものではあった。
ただ、先例が少ない→極端化する、というのは流れに飛躍がある気がして、結局は保留。
いや、感情的にはよくわかるけれどね。しかし嫌いな相手には出来るだけフェアでありたいと……
とはいえ。池澤の、少なくとも前半は客観的な事実といっていい。
うーん。
国としては先例は少ないけれども、アメリカ人はヨーロッパを体内の一部に持っているはずなのに、
それでも駄目なんだろうか。他山の石という言葉もあることだし、他者の歴史を見て
それを取り込むことも出来るのではないか。
それとも、やはり国はある種の生き物で、他国の経験を自国のものとして受け継ぐことは
不可能なのか。アメリカのシンプルさは国として成長する場合の幼年時代であり、
避けることも短縮することも出来ないものなのか。
「子供の国」であると見ていた、ずっと。
その子供が世界で最も力を持っているのだから怖いのだ。
ただし、多分いつの時代も、力をもつのは子供の国であったのだとは思う。
一度成熟してしまうと勢いはどうしても鈍る。
世界を支配するのは子供の、後先を考えない無茶な力。
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クーンツは「だからといって西洋文明が邪悪で危険なものということにはならない」と書いているが、
はっきり言って、わたしは思っています、西洋文明は邪悪で危険なものだと。
西洋文明に自ら進んでずっぽり飲み込まれている日本も同じですけどね。
彼らの獰猛さは一体どこから来てるのだろう。
実に単純な答えだが、わたしとしては、一神教がその源と考える。
一神教だと、それ以外の神を信じる者は「敵」、敵に対しては何をしても良い。
自分が絶対正しいと思えば、人間はそれこそかなり極端なことまで出来る。
しかし実は、一神教が源というよりは、むしろ一神教を生み出すメンタリティが
獰猛さに繋がっているような気がするので、正しく言えば原因と結果が逆。
でも、そうなると獰猛さがどこから来てるのか、全く見当がつかなくなってしまう。
ほんとは「一神教」という簡単な理由付けで安心したいんですけどね。
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話の筋がブレまくりだが、「アメリカ」、ちょっと触っておきたかった。
ずっと気になっている存在ではあるので。
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