正直、この建物についてはあまり明瞭には語れない。なんとなれば、好きだからだ。
好きなら好きの理由を語るという方向ももちろんあるはずだが、
嫌いは「なぜ嫌いなんだろう?」を一所懸命考えるのに対して、
好きの場合、「なぜなんだろう?」と追及するパワーはそれほど出ない。
立証責任がないというか。「なんとなく好き」で温く落ち着いてしまう。
でもまあ、少し考えてみる。
1.出会う以前はこうだった。
実は初めは嫌いだった。デザインが。
だってかっこつけ過ぎてるでしょー。イマドキ流行りの全面ガラス作り。
エレベーターがスケルトン。なんで柱まで上下に穴開ける必要があるかね?
完成した建物を外側から眺めながら、有名建築家はどーせデザイン優先なんだから……と思っていた。
これを作ったのは伊東豊雄。
わたしの贔屓の藤森照信さんとはお友達のようだけど、だからといって甘い見方はしないぞ!
せんだいメディアテーク。正直、何のための建物だかよくわからない。

一応理念を読むと、……まー、色々な媒体を使ってコミュニケーションを取る場にしましょうってことか?
こういう抽象的な言い方もあんまり好きじゃないんだよなー。
メディアテークなんて、よくわからない名前をつけるのも。
わたしの友達も、家族も、相当経つまで「メディアパーク」って覚えていたもん。
こういう覚えにくい名前は良くない。どうして素直に仙台市立図書館にしなかったのか。
わたしにとってメディアテークは、何よりもまず、長年親しんだ市立図書館の生まれ変わりであるわけだから、
それだけでも期待は高まった……というより見方が厳しくなる要素はあった。
だって昔の市立図書館、好きだったんだよ。そりゃ建物古いし、キャパは少ないし、
お世辞にも本が美しく並べられているとはいえない。ぎゅうづめだったし。閲覧席も少なかったし。
でも小学校の時の自由研究もここでやった。昔何度も借りて、好きだった本もここにある。
図書館の建物の外は(あまり美しくはなかったけど)池のある庭園になっていて、
石に腰掛けてぼーっとしたり、お弁当を食べたりしたこともある。
そんな思い出も、メディアテークには引き継げない。
場所も変わるわけだし、名前も違うしね。妙にこじゃれた、訳のわからん建物になっちゃって……
もうここは図書館じゃない。裏切られたような気分にもなった。
2.とりあえず内部偵察。
でも、何しろ図書館だから。完成したら、とりあえず行ってみないことには仕方がない。
友達と二人で見物に行った。その頃は、別な区の図書館を利用していたので、
利用者として行ったのではなく、純然たる見学者。おまけに相当頑なに、
「こんなこじゃれた建物には騙されないぞ!」と考えている。
文句を言う為に見に行ったようなもんだ。実際、多大な不満を覚えることになる。
一歩足を踏み入れると、中は真っ白くてぴかぴか。でもって、一階はなんだかガランとした空間。
現在は入り口右にアートな売店(……とは言わないのか?ショップ?)があるが、
当時は、あったかな?オープンカフェは最初からあったような気がするが……
あまりにもガランとしているので、なんでしょね、これ。という気分になる。
なんか色々催し物をするスペースらしいが……この空虚さは雰囲気が良くないのではなかろうか。
そこここに置かれた、ベンチや受付のデスクの色がオレンジとか黄緑でファンキー。
わたしの求めていた図書館とは違うよなー。やっぱり図書館はもっと落ち着いた建物じゃないとさ。
入って、実は動線がわかりにくい。エレベーターは数箇所あるんだけど、お互いが変な位置関係にあるので、
等間隔に餌を置かれた羊のように、どのエレベーターに乗っていいのか迷う。
エレベーターじゃなければエスカレーターなんだけど、このエスカレーターはわりと目立たないから、
どこが主な動線なのかわからない。この辺でもう気に入らない。もっと動線を整理しなきゃ、と思う。
とりあえず最重要ポイントである図書館へ向かう。図書館のスペースは3階と4階。
……エレベーターを降りた途端、驚愕し、失望する。
これは狭い。狭すぎる。
市中心部に近い現在地に図書館を移すという計画を聞いた時、それは可能かどうか、かなり不安に思った。
敷地、狭そうだもんなあ。でも7階建ての建物だっていうし、それなら平気かな。
せっかく作るんなら、今より本が沢山並べられなきゃ意味がないし……まあその辺は何とかするんだろう。
と、信じ込んでいたことががらがらと崩れた。驚くべき狭さ。何でこれしかないの!?
これで一体、政令指定都市の中央図書館でござい、って顔が出来るの!?
規模としては、……どうだろう、昔の市立図書館の……3分の1か4分の1じゃないだろうか。
(当時の)わたしは、図書館の価値は何より開架図書の数にあると信じていて、
まさか以前より少なくなっているとは予想もしていなかった。
本棚の間を歩き回り、何人かの作家、ジャンルをチェックして、
「これしかない。この人もこれしかない」とぶつぶつ言っていた。この時点で呆れ、大むくれ。
デザインに凝るより、スペースを確保しろ!と伊東豊雄を呪った。
かなり不機嫌になりつつ、後は最上階から順に見て回ることにする。
7階は視聴覚コーナー。最初はソフトの数が揃っていなくて、わびしいことこの上なかった。
これからだろうとは思ったものの、やはり不満。
ブースとか、カウンターとか、そういうものが規則性なく配置されてるのも何となく気に入らない。
棚もナナメだし。そもそも壁が直線ではなく曲線だというのも「いわゆるデザインって奴か?」と面白くない。
(続く)
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