「ポンペイの輝き 古代ローマ都市最後の日」というエキシビに行った。
なるほど、これは輝きだ、と思った。見終わって何が一番印象に残ったといえば、金の装身具の数々。
会場のほの暗い照明の中で、ぎらぎらと存在を主張していましたよ。
やはり金というのは強い、としみじみ思う。
何百年地中に埋もれていても、ちょっと磨けば輝きを取り戻すというのはすごいことだ。
その輝きの、なんというか力強いこと。ふてぶてしささえ感じる。
古代人が珍重するのもよくわかるなあ。呪力を秘めた輝き。
今回のエキシビでは、細工物に惹かれた。現地に行ったこともあるけれど、
その時はたしかこういうものは見られなかった。
順路に従って見ていくうち、最初に気になったのは、取っ手付き皿。
これは青銅で出来ている、形としては実にフライパンに見えるものなのだけれど……
その取っ手のオシリの部分にライオンの顔がくっついている。
何か妙にそれが気になって。
こういう凝り方をする人たちだったんだ、と思って展示品を見ていけば、
青銅系(多分)の細工はなかなか見事だった。
小さな――5,6センチの神像と、カップの類。
神像は小さいながらもなかなか見事なプロポーションのものが多く、わたしのイメージより、
かなり洗練されていた。形そのものも。2000年前の人々はここまで来ていたか。
当然、その細工の上手さは金細工にも生かされていて。
なんと言っても鎖が凄かった!すごく細かい輪を連ねた首飾りがあって、それがもう
どうやって作ったんだ!と言いたくなるほど、ほんとに細かい。
きれいに粒を揃えている。現代の金鎖と大差ない出来。(というのが褒め言葉かどうか微妙だが)
デザインにはそれほどバラエティはなかったかな。たまたまなのかもしれないけど。
指輪はほとんどみな同じデザイン。金のかまぼこ型に宝石を埋め込んだ形。
腕輪なども複数あったが、似たような蛇のデザインがずいぶん多かった。
それと、蛇ではないが、ころころとした球形を連ねた、全く同じデザインの腕輪も何箇所かで見つかっている。
こういうのは同じ金細工職人から買ったってことかなあ?人気職人だったのだろうか。
壁画なんかも、持ってきたり複製したりで、なかなか上手く展示してあると思った。
ポンペイの壁画は、あまりに色が鮮やかに残りすぎて、作り物っぽく見えてしまうところが難だが。
現地ではモザイクが面白かったけど、今回はあまり来ていなくて、ちょっと残念。
さらに面白かったのは、映像作品。
CGで作った当時の復元映像を流していたのだが、なかなか出来が良かった。
やはり知識がないと、見ても想像によって甦らせることが出来る部分は少なくなる。
中庭にたわわな果樹が実っているところ、カーテンがそよ風に揺れているところ、
見せられれば「ああ」と思うけれども、遺跡となった場所をガイドに連れられて見ただけでは
穏やかな日常を、そのディティールまで想像はしにくい。
特にあの「人型」を見た後では。
あれは、その時何が起こったかをダイレクトに理解させるインパクトがある。
造型的には、雑に作られた人体像でしかないものだけど、
その成立過程を知れば、像には血肉が通い、断末魔の呻きさえ聞こえて来るような気がする。
「ポンペイ最後の一日」の地獄図のリアルな証人。
もう一つ映像で面白かったのは、東京大学とどこだか(日立製作所?)が共同で開発したという、
ポンペイに関する写真データ集。(実際はもう少し物々しい説明がついていた)
会場を出たところで、それ専用の大モニターと操作用モニターがあって、
操作用モニターでポンペイの遺跡の見たい部分を指定すると、素早く当該場所の写真
(全体図・細部図・発掘品など。数枚ずつ)を大モニターに映し出してくれるというもの。
この素早さに感動した。あと画像のきれいさにも。
このレベルのものが、自宅のパソコンから自由に呼び出せて、見ることが出来るのなら、
ものすごく素晴らしいことなんだけどなー。
まあ、ただで提供出来るほど、作成手間のかからないデータではなさそうだが……
今回のエキシビは、「これだ!」というインパクトがあるものはなかったけれど、
じっくり見て平均的に面白いものが揃っていた。展示の雰囲気も良かったと思う。
地元では、これが今年の特別展の目玉で終了かな……
東京で暮らしたいとは全く思わないけど、ミュージアムが多いというのだけはうらやましい。
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