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◆ 建築としての宮城県図書館。(その4)

4.細々とした疑問。(その1)

その他、個人的に「ここは違うのでは……」と思っている点。

<正面玄関と裏口>

正面玄関のホールは大吹き抜けで「これでもかっ!」という感じの、
まさに建築の顔なんだけど、果たしてこのホールは活用されているのか?
大きなガラス面で、陽もさんさんと降り注ぎ、一見すごく良さそうなんだけど、
ここでくつろげる人はいるのかなあ。空間に比してベンチが少ないから、
人々の憩いの場って感じじゃないし。

何より、正面玄関を使う人って実はそれほどはいない気がする。
宮城県図書館は、敷地の北側半分が第一駐車場、少し離れた図書館の南側の空き地が
臨時駐車場になっていて、臨時駐車場を利用する人、徒歩で来る人、バスで来る人、は
正面玄関を利用する。
しかし立地条件的に、利用者の多くを占めるのは第一駐車場に停めるマイカーの人ではないだろうか。

で、このマイカー来場者が利用する「サブエントランス」、
……ここがねー、気に入らない。いかにも裏口然としていて。
幅も狭いし、入った直後がすごく暗い。まあ暗いのは、県の財政が苦しいために、
省エネで照明を落としているから……だと思うんだけど。でも、気分が悪い。
(しかし裏口入ってすぐの視聴覚コーナーの暗さは、目に大丈夫なのかね?)

正面側は、エントランスホールから3階(開架図書閲覧室)へは、直行のエスカレーターがあって、
行くのになかなか気分がいいんだけど、裏口の方は、小さなエレベーターが一つだけ。
これは動線として酷いよ。他には階段すらない。今は諦めの境地だが、最初は非常に腹が立った。

エレベーターは、混む時は一回待たなきゃいけなかったり。それに、何だかものすごく運行速度が遅い。
速度自体というより、動き出すまでが遅い。「ボタン押したっけ?」と不安になるほど。
これは「お年寄りや小さな子供に配慮してこの速度なんだろう」と
良く考えようとずっと努力してきたのだが、……シンドラー社製ということを知って、
果たしてそうプラスに考えるべきなのか否か迷っている。

<間取りの問題>

1階南側部分を東から。
1.正面玄関・エントランスホール。2.視聴覚コーナー。3.裏口。4.(一旦外に出る形になって)レストラン。
5.(完全に屋外・地下を掘り下げて)広場。5.倉庫。
1~3の北側半分は事務所等。

2階南側部分を東から。
1.吹き抜け。2.こども図書室。3.講義室。4.生涯学習室。
北側は管理者使用部分が多いが、展示室・研修室・会議室・視聴覚室が北側の5分の1程度を占める。

3階は3分の1の北側は管理者使用部分。(閉架書庫など)
南側は200メートルを、1.新聞・雑誌・行政資料。2.一般・参考図書。3.郷土資料。
の3つに分けて使っている。

4階は南側は吹き抜け。北側は閉架書庫。

……以上のところで、わたしが気になるのは、2階部分の空間の使われ方だ。
展示室、講義室、視聴覚室。……そりゃあればあったでいいのかもしれないけど、
本当に使われているのかなあ?
実は、この辺りの稼働率を知りたくて、図書館の事務方に尋ねてみた。
だがそういう使用状況は資料にしてないらしく、どこがどのくらい使われているのか
調べることは出来なかった。

わたしとしては、講義室と展示室が邪魔だなー。
はっきり言って、宮城県図書館の立地は辺境である。外部の集まりなら、わざわざここまで
引っ張ってくる必要はさらさらない、と思う。もっと交通が便利でいいところは沢山ある。
内部企画のためにそういう空間が必要なら、視聴覚室と一緒にする工夫は出来なかったもんかね?

展示室も……いや、基本的にはこういう使用目的は応援はしたいんだ。
宮城県図書館が所蔵する希少?な図書から、テーマを決めて展示している。
工夫も感じるし、わたしはむしろ他の人と比べて利用している方だと思う。
それそのものはキライではない。が……あまりにも、利用者が少なすぎる。
いつ行っても、他に展示を見ている人を見たことがない。多分一日の見学者は10人、
せいぜい20人いればいい方ではないのか。けっこうなスペース。はっきりいって、無駄、じゃない?

こんなことを言うのも、閲覧席の問題があるからだ。
3階の閲覧席はどちらかというと不足がちだ。特に土日の午後は座るのが難しくなる。
勉強(趣味の勉強も含む)をするに、他に行きようのない社会人、せめて閲覧席くらいは
たっぷり用意してあげたい気がする。この状態を緩和するため、図書館側は
「図書館資料を使用して行う以外の勉強は御遠慮ください」なんて張り紙したりしてるけど、
本当は、誰かを呼んで来て文化講義を開いたりするより、勉強する環境の提供の方が、
図書館の重大な役目だと思うんだよね。

講義室と展示室をつぶせば、自習室に転用できる。今は苦肉の作として、
本来椅子のみで机を置くべきじゃない3階の読書スペースと、
展示室外の廊下のつきあたりに安直な机と椅子をならべ、閲覧席としている状態。
かたや利用者がほとんどいない展示室。本末転倒って奴じゃないですか。

まあ、間取りに関しては県側のリクエストが主なんだろうから、設計者だけを責めてはいけないけど……
それを別にしても、妙なところを凝ったせいで、空間を無駄にしていると思うところは多々ある。
たとえばこども図書室。

<こども図書室>

こども図書室はレベルとしては2階にあるが、空間としてはエントランスホールに続く
円筒形の巨大ドラム缶、という形状をしている。これが悪いとは言わないけれど、
わたしは好きじゃない。2階部分とわざわざ切り離していることで(渡り廊下で繋がる)
空間を無駄にしていると思うから。

こども図書館で一番疑問だったのは、エントランスホールに直接降りる階段の存在だ。
なぜ小さな子が上り下りすることが前提の階段を、あんなに長くするのか。
直線だから、一番上で転べば下までまっさかさまだ。……って、実際は途中で踊り場があるから
よほど器用な転がり方をしないと、下までは落ちないだろうが。

子供が利用すること、子供の手をひいた両親が利用することを考えたのだろうか、設計者は。
まっすぐな石の階段。急とまでは言えないけれど、子供向きにゆるやかになっているとまでは
とても言えない。そこに立った時、親は平地を歩く時の何倍もの緊張を強いられるはずだ。
そういうストレスをかける建物というのはどうなの。

実際は、この階段を使う人は少なく、特に幼児を連れたような人は、エレベーターなり
エスカレーターなりで2階にあがり、そちらから入る。別に問題はないとも言えるが、
ではこの階段は飾りでしかないのか。飾りで満足なのか。
見てくれとコンセプトだけではオブジェでしかない、というのはここんところだ。

以前は手すりがもっとひどかった……。両側に手すりがついてるのは当然として、
それがまた細い棒状のステンレスで作られた、すごく頼りない見てくれのものでねえ。スカスカな感じ。
子供がすり抜けて落ちる、とまでは考えなくていいかもしれないが
ただ、子供がぶつかったりして、棒が一本不意に外れたとしたら、落ちる可能性はありますね。
ちなみに、いつのことかは知らないが、ここはスカスカな部分に板を渡して補強されました。

※後日、展示室を覗いた時、7,8人の見学者を見かけた。
 なので、一日10人というのは訂正する。珍しく係の人も着席していた。

※こども図書室への直行階段は、記憶にあるよりも段差は低かった。
 幼児に適さないとまでは言えない角度。
 しかしあの手すりだと、幼児が掴まりにくいのではないか。

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