これは「長い」本。
本来、エライ・エラクナイという話ではないのは百も承知だが、でも言いたい。
「戦争と平和」読了!お疲れさま\(^o^)/!よくやった!
でも、読み終わって腹が立った。
ものすごく気に入らないのは、最後のエピローグ第2編。
なんでこの期に及んで、論じ始めるんだろう。今ここでやらなきゃいけないのは、「戦争と平和」という
小説を収束させることでしょ?ここまで風呂敷を広げて、
畳めなくなったから、苦し紛れに格好をつけたとしか思えん。
……しかしエピローグ第2編のさらに後に、付録として「あとがき」があって、トルストイはそこで、
「戦争と平和」とは果たしてなんであるか?これは長編小説ではない。
叙事詩ではなおさらない。歴史的記録では、さらにさらにない。
「戦争と平和」は、それが現在表現されているような形式に表現することを
著者がのぞんで、そして表現しえたところのものである。
と言っている。これっていかにも……言い訳に見えるが。
書き手が書きたいことを書くのは自由だ。しかしそれと同じ程度に、読み手は読みたいように読む。
書き手がどういおうと、わたしはこれを小説としてしか読めん。そして小説としてみれば、
こんな終わり方は情けない。
……舞台を見ているとしよう。何でもいいけど、わかりやすいところで「ロミオとジュリエット」とか。
最後の最後、ジュリエットが短剣で自らを刺して息絶える。ここで終わる、その直前に、
突然舞台中央に演出家が出てきて、講釈を始めたら観客は楽しいか。
演出家に、たとえどれだけ言いたいことがあったとしても、舞台というフィールドを選んだ以上、
言いたいことは劇中で役者に語らせるべきだ。それが出来なければ黙っているべき。別の機会を捜すべき。
トルストイが論じたかったのなら、なんで「何とか論」を書かないかねえ。
そしたら別に文句ないのに。読まないけど。
正直に言うと、エピローグ第2編の内容のうち、理解出来たのは半分。一文一文は頷けても、
文が繋がっていくに従って、「なんでここまで書いてるんだろう」という方向に行ってしまう。
だってエピローグでしょ?テーマに向かって、収束して行ってるだろうか。
思いつくままに、書きたいことを書いているように見える。
エピローグだけではなく、全体的に、ここまでの長さにする必要があったのかという疑問が
頭から去らなかった。大きいものを作るのがそれなりに大変だということは言えるけれど、
それと作品としての良さはイコールじゃありませんからねえ。
プリン100個分を1個で作ったら、それはそれで凄いけど、美味しさとは別、というような。
これがロシア的重厚なのだろうか。全面を埋めないと先へ進めないのか。
わたしが読んだのは、河出世界文学全集で2冊組の奴だったけれど、最初の50ページで、
登場人物100人越えたんじゃないだろうか。大袈裟かな。しかし、ちょっと多すぎないかね。
どうもなあ。……「このキャラクターはほんとに必要なのか?」と疑問を抱きつつ読んでいた。
さて、そしてようやく内容だが……まあ、わたしが興味を持てる内容じゃなかった。
何しろ、当該戦争について知ってることと言えば「ナポレオンの没落のきっかけになった
ロシア遠征だったかな」が唯一。皇帝アレクサンドルについて浮かんで来ることは何もないし、
ロシアの社会情勢も何も知らない。そういう状態だと、どうしてもぴんとこない。
それでも、1冊目の後半は面白く読めた。アンドレイが転んで青空を見上げた辺りで、
ようやく話に入れた。2冊目もちょっと楽しみだったくらい。
でも2冊目はあまり面白いと思うところはなかったなあ。
全体的な要素としては、
政治状況・戦争状況
個々の戦闘状態
戦争における個々人の心理
警句的一般的真理
ロシア貴族社会
個々人の生活・心理
こんなところだろうか。戦争部分は「ここまで細かく書かなくても」と思うし、
日常部分は「細かく書いているわりには、あんまり効果的じゃない」と思う。必然性を感じない。
恋愛部分はほんとに飾りでしかないしね。終盤になってくると、なんだか人間があまり意味なく
死んじゃうし。エレンの死が軽くて可哀想だった。
わたしはアンドレイ公爵が好きだったのに、彼の死もなんか適当で……
まあ、キャラクターを描く作品ではないんだろうけど、特に後半は人間が単なる「駒」だと感じた。
全体的に書き割りっぽい。唯一、ピエールくらいかな、血が通っている感じがしたのは。
前述したように、エピローグ第2編はキライだが、第1編も納得できない。
みんな必然性なく性格が変わっちゃったように思える。
ニコーレンカのあの台詞で終わらせる意味は一体何なのだろう。
あれで小説としておさまりがついたと言えるだろうか。
エピローグが無難だったら、「大作を読んだ!」という満足感が一番だったかもしれないけれど、
最後の最後で腹が立ったから、読後感はいまいち。まあ良い。「読んだ」というだけで。
再び読むこともないだろうし。さて、この次はいつの日か「罪と罰」を……
多分二十年後くらいに。
新潮社 (1972/03)
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注:河出の訳は中村白葉。
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