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<THE 有頂天ホテル>

【快作!】

(まだ見てない方は、読む前に見た方が楽しめると思います)

欠点がないわけじゃない。減点法で見れば、70点、もしかして60点くらいになってしまうかもしれない。
が、ここまで楽しませてくれれば、素直に拍手するしかありませんよ!

テンポも役者も最高。やっぱりさー、俳優は演技が出来てこそだよっ!
上手い役者が出ている作品は、厚みが違う。それをここまで集めましたからねー、この作品。
集まったのは「三谷幸喜だから」という部分もあると思う。えらいぞ、三谷幸喜!

正直に言うと、話として、最終盤の収束はまだまだ弱い。カタルシスに欠ける。
それは「王様のレストラン」でも「笑の大学」でもそうだったなあ。
多分終わりを書くのは苦手な人なんだろう。彼の真骨頂はくるくると転がってゆく
シチュエーションを描くことで、話全体の構築はそれより劣る。と思う。

でも、その転がりまわる役者たちの可笑しさと言ったら!
ドミノを見ているようだ。……「ドミノ」という映画じゃなく、ドミノ倒し。
この映画を見て面白いと思った人は、ドミノ倒しとか、えーと、なんていうんでしょうね、
ボールが仕掛けをうろうろして、最後に何かのスイッチを押したりする奴――とか、
好きな人多いんじゃないかな。いや、誰にアンケートをとったわけでもない、個人的な推測ですが。

ほんと、役者さんたちがみな生きてましたからねえ。もちろん多少の強弱はあるにしても。
それぞれのエピソードを平行して走らせるばかりではなく、それぞれのリンクのし具合もなかなか。
そうかー、ここでこれを使うんかー、と思った人や物があちこちにあった。
こういう部分を見ると、「ちくしょー、やりやがったな!」という快感で、癪に障りさえする。
別に癪に障る必要は全然ないんだけれども。

いいところは沢山ありすぎるので最後にまわし、気になった部分をあげてみる。

●役所広司の嘘のつき方は無理がある。まあ、その辺を楽しむべきなんだろうけど。
 でも、わたしはハラハラしながら見る話ってキライなので、あの恥ずかしさを
 ずーっと引っ張られるのはツラかった。

●佐藤浩市が、松たか子の台詞で再び豹変するシーンはちょっと。もっと周りでコミカルに、
 「ええええ~~っ!」ってリアクションをとって欲しかった。それに、松たか子が言う内容も、
 あれは違和感ないかねえ?妻ならまだしも、捨てられた?愛人だったら、逆のことを
 言うほうがありそうな気がするのだが……。急に決まった記者会見、ということも考えると。
 もし言わせたいんだったら、堀内敬子相手に、事前にそれっぽいことを呟いていた方が、
 説得力があったと思うんだけど。かっこつけることを批判しているだけでは、少々弱いと思った。

●西田敏行がかわいそうだよ。脚本的に、彼はちょっと見せ場が足りなかった感じ。
 記者会見場で歌う時、追いかける記者とついつい西田敏行を映してしまうカメラマンが
 ぶつかりあってくれると良かった。……それから、裸にならなくても良かった気が。

●川平慈英がちょっと……前面に出過ぎ。うるさい。あと25%出力をダウンしてくればなあ。

いやいや、しかし楽しませてもらった。興行成績もなかなかのようだし、
こういう「プロ」の仕事にお金が集まるのは嬉しいですね。
劇場の笑い声で、そこはかとない一体感を感じることが出来たのも良かった。
反面、混んでて隣の人を気にしつつ笑わなきゃならなかったのが、多少ツラかったが。

わたしは滅多にDVDを買わないけれど、これ、特典が充実していたらちょっと欲しいかな。
オーディオコメンタリーとか、ぜひつけて欲しい。メイキングも楽しそうだ。

快作!

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