【悪くもないが……】
ストーリーに不満があるなあ。
一番気になったのは、お父さんが死ぬ辺りまでの流れで。
何だか話がやたらと飛んだり跳ねたり。これ、史実じゃないのなら(ないでしょ?)
別にオーランドが村の鍛冶屋である必要ないと思うのだけど。
これがあるから「そんな突然現れた人に情愛が抱けるか?」とか
「何であっという間に剣の達人になる?」とか「突然現れた息子に周りの者が心服するか?」とか
色々考えてしまうわけで。最初からの跡取り息子じゃどこがいけなかったんでしょうね。
最初から、エルサレム近辺の話でまとめた方がずっと深く描けたのではないかなー。
いいじゃん。民と共に井戸を掘る、領主の若き倅という役どころで。
そうしてこそ、父親の考えにも深く共感出来て受け継げるんだろうし、
王に対する忠誠も強固なものになるんでしょう。民やエルサレムへの愛とか。
取り立てられるのも自然かもしれない。
何故鍛冶屋部分があるのか。納得出来ない。
というか、これを言っちゃおしまいなんだけれど、この時期のこの場所に焦点を当てるなら、
主役をボードワン4世とサラディンにした方が内容的にはずっと面白くなりそうだ。
……そうすると客寄せのオーランドが主役になりませんが。
興行収入に差が付くか……
恋愛要素も、「一目見て好きになりました」以外の何物でもないしね。
運命の恋愛なんて、言い訳にしか過ぎないよ。実生活で「運命の人と出会ったの」なんてやってみろ、
傍から見たら当人同士の勘違いでしかないんだから。しかも不倫だろう!
「トロイ」と同じだよー。あれは元ネタがああだからしょうがないけど、しらけるよー。
付け足しでしかないよー。単なる不倫だよー。政敵の妻を寝取るなんてもう少し物を考えろよー。
でも、役者としては良くなって来ましたね、オーランド・ブルーム。
「指輪」(=ロードオブザリング)では演技が少々ぎこちなかったと思うし、
トロイでは役柄の情けなさにも足を引っ張られ、
(あの役に説得力をもたせるのは、よほど力量のある役者でないと……)
おいおい、という感じでしたが。(「パイレーツ」は役に合ってたけどね)
表情とか、雰囲気とか、良かったです。
ただエルサレム籠城の時の演説は、……どーもヴィゴ・モーテンセンを思い出して苦笑。
あそこまでシチュエーションが似ていたら、本人も多少は意識するんじゃないかな。
参考にした、とまでは言わないけど。
オーランドにもうちょっと厚みがあったら、もう少し良いシーンだっただろうけどね。
言っちゃ悪いが、エルサレム攻城戦もかなり「指輪」を連想させましたよ。
しょうがないんだろうか。やっぱりああいうものはああいう風にしか撮れないものなんだろうか。
多少新鮮だったのは、少数で城を防ぐ時の、陣形を空から撮った(CG?)ショット。
戦術的にあの陣形が実際にあったのなら、より褒めたい。なかなか見る機会のない映像。
でも何といっても良かったのはボードワン4世ですよ。いや、サラディンかな。
この二人の存在、関わりをもっと見たかった。
サラディンは文句なくかっこよかった。ボードワン4世は……切ないですね。
画的にはとても不気味なんですが。一番共感出来た。でも仮面を取るところは不要だったと思う。
それこそ、「美しかった時のわたしだけを思い出に……」(台詞はうろおぼえ)ですよ。
リーアム・ニーソンは期待していたんだけど、飛んだり跳ねたりの展開で力を生かせず、残念。
そしてデヴィッド・シューリスの穏やかな顔に癒やされていたわたし……
話が妙に現代的なのも気になるといえばなるんだけど、わたしは「こうであって欲しかった」
という願いもこめて良しとする。十字軍と言ったら、宗教に名を借りた略奪軍、という
イメージがあるけれど、その中にもヒューマニティを備えた人がいたらなあ、と……
いたと信じたいという意味をこめて。
セット、衣装は好き。鎖帷子がWETA制作だとあって、笑った。
だれかがまた指紋を消したんだろうなあ……
エルサレムに向かう港町のセットはとても好きだった。ああいうのが見られるから、
こういうコスチューム物を見に行くんだろうな、自分は。
しかししばらくこういう「大戦物」はいいかも。指輪・トロイ・本作、と来て食傷気味。
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